「SHOGUN」は、地位、権力、宗教、欲望、愛などが折り重なり、時に交錯し、時に乱れ、物語が進む。
善と悪、外国と日本などはっきりと分けることはできない。
共鳴と不共鳴が折り重なる世界。
〝レイヤー〟で構築された雅楽。
概念的にもしっくりくる。
概念だけではなく、
多朗さんと私は、雅楽だからこそ醸し出せる映像への影響、効果があるのではないかと思った。
※説明のため、「SHOGUN」はドラマだが、スケールからほぼ映画。ということで、サウンドトラック=映画音響として話していきたい。
映画音響とは大きく分けて、「声」「音楽」「効果音」で構成されている(参照:“映画音響”の歴史と進化…『SW』に『地獄の黙示録』、『ジュラシック・パーク』の音はこうして作られた―MOVIE WALKER PRESS 2020/9/12 より https://moviewalker.jp/news/article/1006445/)。
「声」はもちろん俳優の声。
「音楽」は劇中曲。
「効果音」は【SFX(特殊効果音)】【FOLY(フォーリー、動作音)】【環境音】の3つ。
【SFX(特殊効果音)】【FOLY(フォーリー、動作音)】は、感動、臨場感をさらに高めるために作られる音。
【環境音】は「全てのシーンの背後にある音の層のこと」で、現実に存在する音を言う。
雅楽は、「音楽」と、「効果音」の内の【環境音】との間のような役割が果たせるのではないかと思ったのだ。
#fourth movie sound
笙は、邦楽器で唯一和音を奏で、その和音は近代西洋の和声学では扱わない特殊な和音。天から音、光が降り注ぎ、空間に満ちるような印象を与える。鳳凰の鳴き声を真似て創造されたと言われている。
篳篥は古の時代から、地上の音や人の声音を表し、龍笛の音は音域(2オクターブ)が非常に広くて旋律が動き回る特徴があり、天上と地面の間を飛び回る龍の鳴き声を模したと伝わっている。
その他、楽琵琶、鉦鼓などもあるが、これらが一緒に鳴った時の音は人知を超え、「宇宙」としか例えられない。
「人の抒情の外にあり」と表現した文筆家もいる。
さらに、以前も述べたように、雅楽の音と曲は奈良時代に日本の起源を持ち、平安時代に完成し、今もその奏法、音色が継承されている。
すなわち、千年以上前の空間、当時の人々の感覚(センス)、古代的なエネルギーに満ちた次元に一瞬でワープさせる力があるということではないだろうか。
しかし、無二の音、エネルギーを放出していながら、その響きは自然を犯さず、共存する。人が創る音でありながら、風の音、葉の音、瀑声、川のせせらぎ、鳥の声などの自然界の音のような、環境音のような。
自然現象のひとつの音なのではないかとさえ感じる時もある。
さらに言及すると「マインドをフラット」にする効果もあるとも言われている。確かに、雅楽を聴いている時に感覚は、(曲にもよるが)自然の中で感覚がナチュラルになる現象と似ている気がする。
古の空間、センスにワープできて、古代的エネルギーに満ちていて、未知の生き物の声を模し、自然現象のような響きを持つ。
未知、摩訶不思議(#mysterious)過ぎます(笑)が、
雅楽は「音楽」であり、人間が創る「環境音」ではないだろうかと気付いたのです。
映像に取り入れた場合、第4の役割、効果を発揮できる気がしてならないのだ。
映像に雅楽の響きが神聖な、ミステリアスな、古代東洋精神を表わすような空間を創り、立体的になる。深度も増す。しかも、知らずにマインドはフラットに、感じる力が開かれている。
ストーリー、映像がさらにグッと入ってくる可能性もある。
〝第4の映画音響〟。
面白いと思いませんか。
体感したい方は、まず「SHOGUN」で。
歴史観、世相、思想感などの物語のバックグラウンド、登場人物の感情、展開にサウンドトラック、雅楽、日本の伝統楽器が見事にフィットしている。
映像と音楽のフィット感。
多朗さんは、東京藝術大学で論文「武満徹の映画音楽における映像と音の対位法」(Toru takemitsu’s counterpoint of movie and sound in the films)を書いている。当時、多朗さんは映画音楽、映画音響、雅楽が関係性を持つとは思ってもいなかったでしょう。
日本を代表する作曲家、音楽プロデューサー、武満徹氏(1930- 1996年)は新作雅楽も作曲しています。
二人に、今起きている現象に、シンクロニシティ(#synchronicity)を感じずにはいられません。
次回、雅楽と少し外れるかもしれないが、「武満徹#toru takemitsu」「映画音響#movie sound」について。
少し、探っていきたい。
Written by Atsuko Aoyagi / ao.Inc.
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