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gagaku譚4:武満徹氏と「雅楽」と「映画音響」と、多朗さん①

2024.09.08
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前回、雅楽は「音楽」のようで「環境音」のようであると書いた。#fourth movie sound(「gagaku譚3:雅楽は「第4の映画音響」?!

 

 

その発想は、雅楽の作曲、編曲も手掛ける多朗さんが総合アレンジャーとして関わった「SHOGUN」を通して得た。

そして、世界的作曲家・故武満徹氏のある曲、その曲にまつわるエピソードもその誘引の一つとなっている。

 

 

◆『ノヴェンバー・ステップス』誕生逸話

 

日本を代表する作曲家・武満徹氏の出世作と言われる『ノヴェンバー・ステップス』。世界的指揮者・故小澤征爾氏からの依頼で制作した、日本の尺八・琵琶とオーケストラによる斬新な曲で、1967年11月、アメリカ・ニューヨークで初演され、高い評価を得ました(琵琶:鶴田錦史氏 尺八:横山勝也氏)。

 

小澤氏は当時ニューヨーク・フィルの副指揮者。武満氏、当時30代。曲を書き始めると徹底した合理主義の洋楽と、西洋ではノイズとされる倍音などを持ち味とする邦楽という【西洋と日本の音楽性の違い】に悩み、行き詰まったそうだ。

※作曲の主旨は、「西と東は違うのだということを表したかった」という思いだったそうです。

 

その窮地を救ったのは、滞在中の山里に鳴り響いていた“村の有線放送”だったという。風や鳥のさえずり、決してお互いを損ない合う事なく響きあう自然の音と放送の音。そうした環境音を聴くことで、それぞれが独自に存在しながら共存もする、これまでに無い新たな発想の協奏曲を完成させた―という。

【そうした環境音を聴くことで、それぞれが独自に存在しながら共存もする、これまでに無い新たな発想の協奏曲を完成させた】

 

独自に存在しながらも共存―。

ミックスではなく、レイヤー。

 

聴いた時、音楽に精通しているわけではない私の実に感覚的な感想だが、調和を楽しむと言うより【異質なもの、音を楽しむ】【違和感を楽しむ】時間だった。

揺れの違いも感じた。

邦楽器がいかに自然の揺れに近いかを感じたのだ。

そこにはドラマもあった。邦楽器の奏でる物語、絵巻、譚に西洋楽器のオーケストラがBGM、効果音を奏でている感覚に近い感じを受けた。

「聴いておくれ、日本古来の音を」「独自に育った音を」という言霊も感じた。

YouTubeで演奏の光景も拝見した。そこには尺八の重く、丸い振動が見え、琵琶が空間に鋭角に差し込む。時に切るように、時に肩を撫でるように。

琵琶、尺八が鳴るとなぜ、より静寂を感じるのだろうか。

 

 

多朗さんは「ミックスされない世界の美しさを表現していたのではないか」と感じたそうだ。

 

雅楽はいわばオーケストラだが、決してミックスではなく、「レイヤー」だ。

無も、空(くう)も、「存在」も表現する。

 

やはり、人が奏でる自然音でもあり、環境音でもあるような・・・。

気付き、思いは巡り、いや重なり前回の「第4の映画音響」にたどり着いた(お、ここにもレイヤーが。多朗さんに「また上手いことを言おうとしている」と突っ込まれそうだ⦅笑⦆)。

 

 

 

武満氏は、後に、雅楽の新曲・管弦楽曲「秋庭歌一具」を手掛けた。

 

秋庭歌一具

 

新作雅楽(古典雅楽以降に作曲された曲)の中で屈指の素晴らしい作品だ。

多朗さんも「6曲からなり、50分を超える大曲ですが、雅楽器の伝統的な技法を用いながら、通常とは異なる編成で新しい響きを生み出しています。 しかし知らない人が聴いたら、普通の雅楽の曲だと思わせるほど自然です」と語っている。

「雅楽の世界へようこそ:古代から現代へ、息づく伝統音楽」

 

 

そして、映画音響(音楽)にも優れた才を発揮しました。

 

 

―長文となってまいりましたので、

続きは次回、お話させていただきます。

 

 

 

Written by Atsuko Aoyagi / ao.Inc.

 

 

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