前回【gagaku譚4:武満徹氏と「雅楽」と「映画音響」と、多朗さん①】の続きです。
日本を代表する現代音楽の作曲家、音楽プロデューサー武満徹氏(1930- 1996年)の〝琵琶、尺八とオーケストラのための作品『ノヴェンバー・ステップス』〟(1967年)からの気付きを中心に綴らせていただいた。
武満氏は、映画音響(音楽)においてもその優れた才を発揮している。
◆武満徹サウンドと映画音響
武満氏の〈音〉の感覚は、他に類を見ないほど優れていたそうだ。音の一つ一つを敏感に感じて、それがどのような効果があるかを理解していたといわれている。
小林正樹の『怪談』『切腹』、勅使河原宏の『砂の女』『他人の顔』、篠田正浩の『乾いた花』『はなれ瞽女(ごぜ)おりん』、黒澤明の『どですかでん』『乱』、フィルップ・カウフマンの『ライジング・サン』など、約100本。
西洋楽器、日本の伝統楽器、東南アジアの民族楽器、電子音楽、ワルツ、ロックなどを巧みに用い、映画、シーンをさらに印象深いものにしたそうだ。映画を音響そして音楽で支えた仕事は高く評価され、氏亡き後も、音楽に焦点を当てた形での上映会も数多く催されている。
多朗さんは、東京藝術大学大学院時代に「武満徹の映画音楽における映像と音の対位法」という題で論文を書いている。
武満氏のいう「映像と音の対位法」とは、音・音楽が単純に映像のリアリティを増すために機能するのではなく、より高次元で結びつくことで、音・音楽と映像とを切り離すことが不可能な状態とすることを意味している。
映画「怪談」では、幽霊屋敷に侍が迷い混んで床が抜けて落ちる。そのズバッと落ちた2秒後くらいに音が鳴って音楽が始まる。間を外したら意味がない。映像と音を見て初めて一つの「映画」、シーンとして重なる。武満徹の映画音響はその連続なのだ。
武満氏の手法に感銘を受け、論文まで書いた多朗さん。
「SHOGUN」のサウンドトラックに協力する中、音楽を手掛けていたアッティカス達がやろうとしていることは多分それなのではないかと思ったという。
「この映像に合っているものだけがほしい」
「何か心地良いとかはいらない。そんなことではないんだ」
「他の映画でも使える汎用性のある音楽はいらない」...など。
次回は、「SHOGUN」のサウンドトラック制作、アッティカスら海外の音楽家が雅楽に期待した効果ついて。
さらに、探っていきたい。
Written by Atsuko Aoyagi / ao.Inc.
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