

2014年、東京藝術大学大学美術館・陳列館にて開催された
「別品の祈り|法隆寺金堂壁画展」において、
展示空間および映像のための音楽制作を担当しました。
本展は、1949年の火災によって焼損した法隆寺金堂壁画を、
原寸大で再現し、さらに映像化することで、
失われた時間と、なお残り続ける祈りの感覚を体験的に提示する試みでした。
美術館から求められたのは、
単に歴史的雰囲気を補強する音楽ではなく、
宗教・時間・身体感覚が交差する空間に耐えうる音でした。
依頼内容として提示されたのは、
雅楽および声明を基調とする2曲の作曲。
ただし私は、現在一般的にイメージされる
大人数による雅楽合奏の形式ではなく、
より根源的で、削ぎ落とされた音のあり方を出発点に据えることを選びました。
楽琵琶独奏のための作品。
雅楽の響きを、豪奢な装束をまとった身体にたとえるならば、
その装束を脱ぎ、肉を削ぎ落とし、
骨格だけが残った状態の音をつくりたいと考えました。
音の装飾性や荘厳さを極限まで排し、
祈りが成立する以前の、
音の最小単位としての存在感を探る試みです。
演奏は、当時すでに稀少となっていた
楽琵琶独奏を現在において体現する奏者、
中村かほる氏に依頼しました。
声明を起点としながらも、
うた、チューバ、太鼓、シンセサイザーという
異質な編成によって構成された作品です。
原型としての声明から距離を取りつつ、
祈りが特定の宗教形式を離れ、
万象へと拡散していく感覚を音として再構成しています。
伝統を再現するのではなく、
時間・身体・響きが現代において
どのように再接続されうるかを問い直すことが主眼でした。
本プロジェクトは、
展示に音を添える仕事ではなく、
「失われたもの」と「いま立っている場所」を
音によって接続する試みでした。
なお、本作『骨歌』『万象歌』は各種配信プラットフォームにて公開されており、
両曲を収録したアルバム『あそび』としても発表されています。