2022年11月27日-12月11日栃木県那須塩原市黒磯の美容室『salonChiune』にて開催した『雅楽展』。
会場で配布した挨拶文をここに掲載いたします。
雅楽という音楽に初めて触れたのはかなり前のことになりますが、思い返すと当初は他国の民族音楽を聴くような感覚で、何処か自分とは縁遠い存在として捉えていました。
折しも2020年を皮切りに世界を席巻したコロナ禍により、それまで当然のように続けてきた私たちの音楽活動はストップし、
同時にそれは音楽が持つ力や役割をもう一度問い直させられる機会ともなりました。
その問いに対し、答えの兆しのようなものを見せてくれたものが、改めて再会した雅楽でした。
雅楽はおよそ千三百年前の飛鳥時代、大宝律令の制定に伴い雅楽寮という朝廷の音楽を司る機関として、その始まりを窺い知ることができます。
さらに、そこまでに至る源流的な地点の方へと遡ると、それはゆうに二千年を越える時の流れの中で、
渡来文化とも交雑しつつ連綿と繋がれ、醸成されてきた豊かな音楽文化と言えるでしょう。
そんな大いなる悠久の流れを抱く雅楽が私たちに伝えようとしているものとは一体何なのでしょうか。
雅楽は西洋音楽的な枠組みとは大きく異なった存在です。音楽そのものはもとより、
楽譜も楽器の特性も、普段わたしたちが触れているものとはまるで違います。
12音階では表せない微妙な音程の表現や、均一化されないリズムなど、多様な独自性があり、
それは雅楽が難解に捉えられてしまう原因となっているのかもしれません。
しかし、その中にあえて飛び込み体感し、理解しようとすることによって、
呼び覚まされる記憶や拡張されてゆく感覚があるように感じています。
それは人間の体や意識を再び捉え直すことにもなるでしょうし、音楽を通した自然との交歓、
そして、時を超えた古代との コミュニケーションとも言えるでしょう。
雅楽に限らず、古より紡がれてきた文化には、現代社会では隔絶されてしまった様々なものとの関係や、
私たち自身の人間性を修復するための叡智がたくさん秘められています。
未来への変容の予感、そして直観の中でスタートしたどんぶらこですが、
その確信の部分を辿るならば、きっとそのようなことなのだと思います。