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おすすめの雅楽・古典雅楽から新作雅楽まで【3曲】

2023.01.21
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おすすめの雅楽・古典雅楽から新作雅楽まで【3曲】

 

陵王乱序(りょうおうらんじょ):古典雅楽

 

導入から始まる打楽器(鞨鼓・太鼓・鉦鼓)のグルーブが最高にかっこいい名曲。

ビートだけが延々と続くことで生まれるこの心地よさは
ヒッポヒップのブレイクやミニマルテクノ、ガムランなどの
ずっと変わらないビートを聴いている感じに近い印象があります。
雅楽特有のゆったりと揺れるグルーブが素晴らしい。

打楽器でできた心地いい空間に、唐突に斜めから切り込んでくる龍笛の音がエコーのように重なり、
堂々たる世界観に一気に幻想、幽玄の雰囲気が立ち込め、
まるで異世界の戦場にいるかのような気持ちになります。

聴いているだけで雄大な気持ちが沸き起こってくる名曲で、
雅楽を聴いてるという特別な気持ちもなく、日常的に聴いています。

 

この曲は舞楽『陵王』(全体はものすごく長い)のほんの一部分です。

鞨鼓・太鼓・鉦鼓だけの演奏が始まってから、舞人が舞台に上がり舞い始めます。

その舞に合わせて龍笛が演奏を開始。

その4拍あとに二つ目の龍笛グループが演奏に参加、

さらに4拍遅れて第三の龍笛グループが演奏に加わっているため、

カノンの形式になっています。

 

越天楽(えてんらく):古典雅楽

 

越天楽が雅楽界で一番有名な曲である理由について、詳しくはこちらのページに記載しましたが、
つまりはメロディが雅楽のなかで一番キャッチーだったから有名になったんだろうな、というのが僕の推察です。

雅楽の特徴の一つは「一つの旋律(メロディ)をすべての楽器がそれぞれのやり方で演奏をしている」
ということです。

クラシックやロックでは楽器での役割がかなり明確に分かれていますよね。

メロディはフルート、伴奏はピアノ、リズムはドラムのように、各楽器は別の役割があり、

お互いに補完し合うように成り立っています。

それに対して、雅楽ではすべての楽器が同じメロディを演奏している、というわけです。

もちろん個々の楽器はそれぞれに特徴があるため、
楽器ごとの演奏はまったく違うものに聞こえますが、
本筋では、同じメロディを演奏していると言えるようです。

 

越天楽はそのメロディが口ずさめるほどにキャッチーです。
そのため、例えば越天楽の龍笛のメロディだけを覚えてから
ほかの楽器を聴いてみると、なんとなく各楽器が同じメロディを演奏している、

ということが少しわかるように思います。(ぼくもはっきりとはわからないところが多いですが・・)

 

篳篥や笙など雅楽楽器を習うときにも最初に習うのも、
越天楽であることが多いと思います。

そういう意味でもやはり、雅楽の導入として外せない曲だと思います。

 

 

 

秋庭歌一具(しゅうていがいちぐ):武満徹作曲

 

作曲家の武満徹が書いた唯一の雅楽の曲がこの『秋庭歌一具』です。
そして、この曲は新作雅楽(古典雅楽以降に作曲された曲)の中で
もっとも素晴らしい作品の一つです。

全曲を聴くとかなり長いのですが、
せめて一曲目だけでも聴いてみてください。
古典雅楽とはまったく違うものでありつつも
古典雅楽をきちんと通り抜けた先の現代の美しい音楽になっていることがわかります。

武満徹は西洋楽器のみ、または西洋楽器と日本の楽器の組み合わせで
独自の表現を確立した音楽家のイメージがありましたが、
この曲は基本的には雅楽楽器(少し特殊な楽器も入っています)だけで
書かれたにも関わらず、ものすごく武満徹らしさが出ています。

雅楽の世界では、古典雅楽以降、新曲がほとんど書かれてこなかったため、
作曲の方法について過去を参照することがほとんどできません。
その状況で楽器の奏法や、音について勉強をされて、
たった一曲だけ雅楽の曲を残し、しかもいまでも名曲として語り継がれる曲を書いたことに畏敬の念を感じます。

日本を代表する雅楽団体を1985年に設立し、龍笛奏者としても一流だった芝祐靖さんはもともと宮内庁にお努めだったそうですが、
「秋庭歌」を演奏するために、宮内庁をやめ、自分で民間に雅楽団体・伶楽舎を設立したと伺ったことがあります。