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gagaku譚の余談譚④

2024.11.10
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※多朗さんに「雅楽」「伝統音楽」などについて聴いた時の会話の一部を抜粋し、お届けします。

雅楽に関連したり、しなかったり。つい盛り上がってしまったお話なども、お楽しみください。

 

 

2024年11月1日、多朗さんの新作「陵王乱序/太食調音取」が公開となりました。

お聴きになりましたか。

 

作品賞、主演男優賞、女優賞、音響賞などエミー賞18冠の栄誉に輝いたDisney+制作のドラマ『SHOGUN』。世界で大反響を呼んだ同作に総合音楽アレンジャーとして参加以降、多朗さんは〝新しい音楽を模索していた〟と言う。

熟考し、推敲を重ね、一度完成した譜面をゼロに戻し、さらに再考。3カ月以上を費やし、ついに模索のトンネルを抜け、日本音楽界の新たな扉を開ける作品が完成した。

 

今回は、日本屈指の和洋楽器の奏者と臨んだレコーディング時の雅楽楽器、演奏にまつわるお話をご紹介したい。

 

石田多朗(作曲・ピアノ)

中村仁美(舞・篳篥)

中村かほる(楽琵琶)

中村華子(笙)

伊﨑善之(龍笛)

田中李々(ヴァイオリン)

七澤達哉(ヴィオラ)

成田七海(チェロ)

 

以上が、新作「陵王乱序/太食調音取」に登場する楽器、奏者の皆さんだ。

その中で雅楽楽器は、篳篥、楽琵琶、笙、龍笛の4種。

 

一体どんな楽器なのか。

篳篥、笙、龍笛については、過去の当ホームページで多朗さんが下記の中で説明してくれている。

「雅楽 | 楽器について| 笙・篳篥・龍笛・羯鼓」

 

 

 

では、楽琵琶について。

【楽琵琶】

 

 

雅楽に用いられる琵琶を、楽琵琶という。西アジアで生まれ、中国を経由して奈良時代直前に雅楽の楽器の1つとして伝来。形状、おそらく奏法も伝来のままの形を残し、それほどの変化をせずに今日に残っているという。

※日本には琵琶は大きく「楽琵琶」と「盲僧琵琶」の2種類あり、「盲僧琵琶」は「平家琵琶」「薩摩琵琶」「筑前琵琶」の源流となった。

 

楽座(がくざ)(あぐらの1種)をして楽器を水平に構え、撥(ばち)で絃を掻き、アルペジオ風に奏でる。低音が響き渡り、美しく心地よい音色が特徴で、雅楽の楽器の中では楽箏(がくそう)とともにリズムを刻む役割を果たし、唐楽や催馬楽の演奏に用いられる。

リズムキーパー的な役割なのだが、本来は独奏、伴奏、合奏と多様な用途をもっていたそうだ。しかし、希少な曲と思いやるあまり、そうした独奏曲を門外不出の秘曲として扱い、限られた楽士のみの間で伝承してきたために、鎌倉時代には消滅し、今日のように雅楽の管弦合奏のみで用いられる楽器になった。

 

門外不出の「秘曲」。気になりますね・・・。

実は、他の各楽器にも「秘曲」があり、日本三大楽書(雅楽の文献. 一般に雅楽に関する著述)の一つ「楽家録」(江戸時代)にもその記載があるという。

調べなくては・・・。

 

 

 

【実はパワフルな雅楽と、奏者の心象】

 

New Gagaku | Composition & Recordings | 4Songs

 

さて、「篳篥」「笙」は、新曲「陵王乱序|Ranjo」の原曲では使われていない。しかし、この2種の響きが人知を超えた光のようなものを作品全体に纏わせた。

多朗さんは、2つの楽器の奏者それぞれから興味深い話を聴いたという。

 

 

多朗さん(以下、多):新曲では、雅楽楽器、ストリングスそれぞれの奏者に互いにぶつかり合うような感じで弾いてもらった。そしたら、演奏者は「すごく楽しい」と。

今まで、きれいなお皿の上で演奏してきた感覚だったけれど、バトルのようにお互いに本気で、自由で、伸び伸びと動き回るような感じで演奏できたって。「違和感上等」みたいな。

 

私:雅楽自体、ぶつかり合うことが「美」みたいな感覚がありますよね。

 

多:常に答え合わせをしない感じだよね。自然と同じ感覚で型にはめない、はまらない。

篳篥奏者の中村仁美さんも「遠慮せずにできた」と言っていた。そして、普段から「雅楽を演奏する時は砂埃を巻き起こす感覚で演奏している」って。土臭く、激しくぶつけるように。日本の伝統音楽は、実は激しくて超情熱的だった。

 

私:えーーー!!!意外!

 

多:演奏者揃ってのレコーディングの時も、雅楽の音がストリングスの音に埋もれてしまわないか心配していたら、実際は、雅楽の音しか聴こえなかった。弦楽器が一切聴こえない。かき消す。驚きだった。

 

私:衝撃というか、何か感動しますね。雅なイメージが先行しているだけで、本来は力強いものだったのですね。それに、奏者である人間と呼応しているというか、一体化しているというか。もっと、冷静、穏やかな気持ちで演奏されていると思っていましたが、人間らしさも感じてきました。

そういえば、「笙」の共鳴は吹く、吸うを、繰り返して進行するから、「人間の自然節理に従う、人間的特性を持った楽器だ」と解説されていらっしゃる方もいました。

 

多:笙の奏者、中村華子さんもインタビューで「天からの音というイメージより、どちらかと言えば木の下からエネルギーを吸い上げて、放出するようなパワフルなことをしているイメージ」「キラキラな感覚はない、むしろ泥まみれだ」って言っていた。演奏の時も表情を変えないだけで、痙攣するくらい辛いんだって。

 

私:顔に出さない…なんか、日本の美学、精神性も感じますね。

多朗さんの新曲ではその力が発揮されているということですよね。納得。

 

 

 

 

いかがでしょうか。雅楽、そして、雅楽楽器にも益々興味が湧いてきませんか。

 

次回、最後に登場した「笙」について、さらに探ってみよう。

なぜ、「笙」からなのか。

自らも奏者である著名な教授がこう語っていました。

「雅楽の特徴として、まず雅楽の特殊性の大部分は笙(しょう)にある」と。

 

「笙」の森に、入らせていただきましょう。

 

 

 

 

 

Written by Atsuko Aoyagi / ao.Inc.

 

 

 

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