前回(gagaku譚16:栃木公演 リポート①)に続き、2025年1月12日、17時。栃木県大田原市、那須野が原ハーモニーホールで開催された「陵王乱序 | RANJO」栃木公演についてリポートさせていただきます。
◆「小乱声」「陵王乱序」「安摩乱声」
前半の部も終盤に。
6 小乱声 (こらんじょう)- (Ryuteki)
7 陵王乱序(りょうおうらんじょ) - (All(篳篥以外) + Dance)
8 安摩乱声(あまらんじょう) - (Ryuteki + Dance)
2024年11月にデジタル配信されたシングル『陵王乱序|Ranjo』の演奏だ。
原曲は、「陵王」という組曲(約40分)の中の一曲で龍笛、太鼓 打楽器のみの編成でできている。そこに笙、篳篥、楽琵琶、ストリングス、ピアノを入れた。
多朗:いろんな思いがあってリリースした曲。
一語一語大切に、説明を進めた。
多朗:ドラマ「SHOGUN」のサウンドトラック制作を通してLAの作曲家、音楽家たちと雅楽、日本の音楽に非常に興味を持ち、映像音楽として映える技法、使い方を共に生み出した。
けれど、ドラマが終われば、彼らは自分たちの音楽に戻ってしまう。培った感覚を生かせるのは日本人の僕だけ。
「SHOGUN」のサントラ制作が一段落したときに、僕は僕で「洋楽器と雅楽を合わせたら、別の意味で世界の人が楽しめるものが作れるかもしれない」という考えが生まれた。
「陵王乱序」は、改めて「雅楽×クラシック」を世の中にきちんと出してみようと選んだ一曲になります。
そして、この曲は陵王という戦に強い王様の進軍の曲なのではないかと想定し、
「僕らもやるぞ!やっていくぞ!」という意味を込めて、選びました。
『陵王乱序』演奏が始まると会場の空気がピンと張りつめた。
龍笛が始まりを告げ、打楽器が大地を叩くように、鼓動を刻む。ピアノ、ストリングスなどが入り、感情、情景が浮かぶ。龍笛も天を映す。自然現象と人間の起こす現象が同時進行する世界を音で象る。
進軍の意気込みの裏の切なさ不安、不穏といった様々な予感。演舞が退出すると、現実に戻り、音楽と舞が一体になっていたことを知る。舞うのは自分だったか。映画、映像がそこにあった。
力強い拍手。多朗さんが本当に微妙に興奮し、言葉を添えた。
多朗:メディアではあまり言えませんが裏テーマがあります。「矜持」「プライド」。自分というもの、自分が信じてやっていることを大切にしてほしいというメッセージがあります。
雅楽、クラシックも両方とも〝堂々としている〟ところが好きで、だから、その二つを合わせたんです。
◆「地平」「那須中央中学校校歌」
9 地平 - (Piano Solo)
10 那須中央中学校校歌 - (Piano + Chorus 中学生20名)
多朗:次の曲は、まだ完成していません。
「地平」は福島復興のプロジェクションマッピングイベント「はるか」(音楽監督に坂本龍一、大友良英に続き、2017~19年就任)のために作った曲。
栃木、福島で被災された方の体験を聴いて書いた曲は悲しい曲で、そのままでは使えなかった。イベント終了後も見ることができず〝封印〟していたが、栃木公演で多くの地元の方々と関わる中、合唱曲にアレンジする気持ちが芽生えたそうだ。
多朗:まだスケッチの段階なのですが、お披露目してみたいと思います。
鍵盤を記憶、当時の方々の想いを辿るようにそっと押した。
悲しみの跡を眺める。眺め、思い出し歩く。涙をこぼしても、歩き出す。傷んだ体、心を皆が持ちながら、立ち上がろうとする懸命な姿が演奏する多朗さんの背中に重なった…。
前半の部最後の曲へ。
「那須中央中学校の校歌」は移住前、那須町黒田原出身の妻悠紀さんの縁から東陽中学校(後に統合し、那須中央中学校となった)依頼があって制作した。その時は都内で精神疾患に苦しみ、寝込んでいる時期だった。
担当の先生と那須地域を巡りえた感覚から生まれたメロディー。悠紀さんの書いた詞。同校生徒の清らかな歌声に会場の空気はやわらぎ、休憩の時間に入った。
次回、後半の部の様子をご紹介させていただきます。
楽しみにお待ちいただき、ぜひ、東京公演(https://drftr.co.jp/20242025concert/)で共に
多朗さんの音楽、「雅楽×ストリングス」をご体感いただけますと幸いです。
【出演者】
石田多朗:ピアノ・シンセサイザー
篳篥、舞:中村仁美
楽琵琶:中村かほる
笙:中村華子
龍笛:伊﨑善之
バイオリン:田中李々
ヴィオラ:七澤達哉
チェロ:成田七海
合唱:那須中央中学校生徒20人
Written by Atsuko Aoyagi / ao.Inc.
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