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gagaku譚2:なぜ雅楽は「レイヤー」「ミステリアス」なのか

2024.08.11
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雅楽は「レイヤー」。

 

雅楽の起源は紀元前、中国と言われ(詳しくは韓国、ベトナムなどの古代儀式音楽にもルーツを持つ)、アジア大陸、最も長い歴史をもつ東アジアの音楽です。

悠久の時を経て、シルクロードの風、宙、神仏への畏敬、思想、民族性などを纏い、5、6世紀に日本に伝来したと言われている。

 

聖徳太子(574- 622年)※が539年に日本最初の官寺「四天王寺」を建立し、仏教を国家の公認宗教とし、さらに、「仏教法会には外来音楽を用いる」という理念を提唱。「雅楽寮(音:ががくりょう、訓:うたまいのつかさ)」が設けられ、神を祖とする朝廷で伝承されてきた日本古来の歌舞と共に伝習されたそうだ。

そして、平安時代(794-1180年)に現在のようなカタチに完成されたといわれている。1200年以上前の音楽が今も残って、国儀、祭事、冠婚葬祭で流れている(※楽器単体となると、もっと長い歴史を持つため、さらに遡る必要がある。いずれ、共に探りましょう)。演奏者もいる。こんな稀有、驚異的なことがあるだろうか。

 

 

中国、韓国、ベトナムなど東西アジア諸国、そして、日本

神、仏

起源から、幾重もの時代のエッセンス、哲学が折り重なっている。

 

 

※余談:日本の音楽のエッセンス、アイデンティティーとして注目してほしいことがある。

「雅楽」は伝来した音楽ではあるが、中国や韓国は歴史の中で元来の雅楽の形は一時衰退し、復興を図った形が今に伝わっている。すなわち、日本の雅楽が最も古い形を現在も伝承されているということだ。

 

雅楽は、音楽構造的にも「レイヤー」で成り立っている。

 

 

 

〝三管・三鼓・二弦―笛と篳篥(ひちりき)がヘテロフォニー(同一の旋律を、アレンジしながら、同時に進行するもの。)による旋律を奏し、笙がその上方から密集位置のハーモニーをもって支える。琵琶と筝のアルペジオ(和音をばらして一音一音発音させる演奏法。単に和音をポロロン(ジャラーン)と流して弾く場合もアルペジオと呼ぶことがある。)がいろどるリズムの流れに、太鼓と鉦鼓(しょうこ)がアクセントをつけ、それら全体を鼓が主導する、というこの合奏形式は、―〟

と、戦後の日本を代表するクラシック、現代音楽の作曲家黛敏郎氏は書いている(「雅楽だより第58号」 鈴木治夫氏執筆文より引用)。

 

 

雅楽を聴きながら文章を読んでもらうともっと分かるかもしれない。体感できるかもしれない。

柔らかく表現すると、笛、篳篥、笙などのそれぞれの楽器が同じ旋律を奏で、それらが重なり合って、一つの曲を成しているのだ。薄く透明な音のレイヤーが、神秘的で重厚な音を作っている。

 

ただし、その重ね方は譜面に記されていない。体感で伝承されてきた邦楽特有の「間」と「呼吸」で奏で、折り重ねていくのだ。多朗さんが、奏者に聞いても「説明できない」と返ってくるそうだ。奇々怪々。

クラシック、洋楽のように縦線をバチっと合わせるのではないのである。

 

「合ってはいけない」というと語弊があるかもしれないが、規則正しく合わせるのではなく、楽器それぞれの響きがまるで自然現象のように重なり合っていくという感じなのかもしれない。

 

音楽に詳しい方ではないが、素直な感想は言える。

人知を超えた調べに感じるし、「音楽を聴く」というより「空間にいる」という感覚を覚える。

 

 

実際に(実際と言っていいのか)、雅楽の「陪臚(ばいろ)」という曲を7回演奏して「舎毛音」という音が聞こえれば戦に勝てるという逸話がある。

雅楽研究者の田辺聖子さんは、

〝この音が倍音だとか、周波数がどうとか、今なら科学的に説明ができるかもしれません。それができなかった時代に、なんとかこの不思議な現象に理由をつけたのだと思います。そうしてできた雅楽にまつわる言い伝えが、いくつも残っているのが面白いですね。〟とある取材で語っている。

 

 

千年以上前の日本人が生み出した、

レイヤーの「不可思議(mysterious)」。

 

 

 

不可思議なレイヤーを生み出した日本人のセンス。

 

 

 

前述の黛氏の執筆文は、さらにこう語っている。

約千年前、今に残る雅楽を創った日本人は、「合わない音を合わないまま衝突させ」、「避けようと思えばいくらでも避けられる筈の不協和音を、意識的にそのまま残しておいた」。

なぜか―

「微妙な音程のズレから生じる味わいを楽しむことのできる高度に研ぎ澄まされた美感を持っていたからではなかろうか」

 

 

多少の変遷はあったにせよ、現今雅楽は平安雅楽とほとんど大差ないという。

 

歴史的、文化的、音楽的レイヤーで成り立つ雅楽は、平安時代、当時生きた人々のセンスに一気に「ワープ」させてくれるのだ。

 

 

アッティカス・ロスらが作りだしたエピック(壮大な音楽)に、多朗さんによって日本の雅楽が折り重なり、音楽というジャンルだけに収まらない深度を生み出せたのではないだろうか。

 

それが、ストーリー、映像と見事にシンクロした。

 

 

 

映像と音楽のシンクロ、雅楽とサウンドトラック、映画音響について。

探っていきたい。

 

 

written by Atsuko Aoyagi / ao.Inc.

 

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