

日本科学未来館 ドームシアターガイア(プラネタリウム)にて現在も上映されているフルドーム作品
9次元からきた男 の音楽を、石田多朗が担当しました。
本作は、ひも理論をはじめとする最先端の理論物理学を題材に、
「9次元」という人間の感覚では捉えきれない世界を、映像と音で体験させることを目的とした作品です。
監修には理論物理学者・大栗博司 氏が参加し、
科学的正確さとエンターテインメント性の両立が求められました。
音楽制作にあたって最大の課題は、
目に見えない高次元世界を、音としてどう立ち上げるかという点でした。
単に宇宙的・壮大な響きを重ねるのではなく、
観客が「理解する前に、まず体感してしまう」音の構造が必要とされていました。
そこで本作では、電子音響とオーケストラ的な響きを組み合わせ、
空間を包み込むような音場を設計しています。
フルドームという特殊な上映環境を前提に、
音が上下左右から流れ込み、次元が折り重なっていく感覚を生むよう、
時間軸や音色の変化を緻密にコントロールしました。
制作過程では、実際に日本科学未来館でひも理論に関する講義を受けるなど、
理論そのものへの理解を深めながら作曲を進めています。
抽象的な数式や理論を、感覚的なレベルへと変換する作業は容易ではありませんでしたが、
「難解さ」を排しつつ、未知の世界に足を踏み入れる感覚を音で支えることを目指しました。
本作は国内外で高く評価され、以下のような賞を含む多数の受賞・選出歴を持っています。
Best Educational Production Award(IPS Fulldome Festival)
Good Practice Award(Advanced Imaging Society)
Best Visual Effects Award(VFX-JAPAN)
Official Selection(IMERSA Summit)
Official Selection(International Festival of Science Visualization)
「9次元からきた男」は、音楽が単なる演出ではなく、科学的概念を体験へと変換する重要な要素として機能した作品です。
電子音響からオーケストラ的手法までを横断しながら、
人の理解を超えた世界観や、抽象度の高いテーマに対しても、
音楽によって“体感できる構造”をつくることを目指しました。