

2018年、50年ぶりの大規模リニューアルを迎えた 伊丹空港(大阪国際空港) において、中央エリアに設置された巨大な映像作品のための音楽制作を担当しました。
依頼は、パブリックスペースの映像演出を担うプロダクションからのものです。

最初に共有された課題は明確でした。
空港という大きな公共空間で、音楽が主張しすぎないこと。長時間滞在する人のストレスにならないこと。
映像作品でありながら、周辺一帯のBGMとして機能し、なおかつ繰り返しに気づかれない構造をどう作るか——そのすべてを同時に満たす必要がありました。

そこで採ったのは、「空気清浄機のような音楽」という設計思想です。
流れていることに気づかれないほど薄く、しかし場の雰囲気は確実に整える。
音楽的な美しさを保ちながら、反復が意識に引っかからない構造を優先しました。
結果として、映像から距離のある場所でも音が自然に馴染み、空港全体の空気が均される感覚が生まれました。

実際に現地で確認すると、想定どおり音楽は作品周辺だけでなく、広い動線に溶け込み、待ち時間の長い空港特有の環境でも落ち着きを損なわない振る舞いを見せていました。
目立たないが効いている——その状態を保てたことが、この仕事で最も手応えを感じた点です。
本件は、映像のための楽曲制作に留まらず、空間と音楽を切り離さずに設計するプロジェクトでした。
