NHK宇都宮放送局「とちぎ630」番組音楽制作(テーマ曲/気象情報/ジングルほか)

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ニュース番組の音楽は、前に出れば出るほど、番組が大切にしている平等性や信頼性を損ねてしまうことがあります。
でも毎日流れるものだからこそ、音で「この番組らしさ」をつくることもできる。

今回の依頼は、その両方を同時に成立させるところから始まりました。

 

依頼前の相談

 

依頼者は番組プロデューサーでした。
「ニュースとしての節度は守りたい。けれど、他地域の番組と同じような“ニュース音楽”に埋もれず、栃木の人に親しんでもらえる色を出したい」。

栃木には天皇陛下の御用邸や日光東照宮などがあり、土地の歴史と雅楽的な文化が、決して遠いものではありません。
その文脈を踏まえて、雅楽の考え方や響きを取り入れたい、という要望がありました。

ただし条件は多く、簡単な話ではありませんでした。

  • 悲しいニュースや重い出来事を伝える場面でも、視聴者の気持ちを必要以上に沈ませないこと
  • 毎日放送される番組として、聴き疲れしないこと(飽きさせないこと)
  • これまでの番組の人気や視聴者の慣れを踏まえつつ、自然に受け入れられる新しさに留めること

 

制作で行ったこと

 

まず最初に、番組内の音楽全体を貫く「一本のテーマ」を定めました。
テーマ曲、気象情報、ジングルなどが別々の曲としてバラバラに聞こえるのではなく、同じ世界観の中で役割だけが切り替わるように、統一感を最優先にした設計です。

番組テーマ曲では、雅楽の音楽的な発想——響きの捉え方、時間の流れ、余白——を下敷きにしながら、西洋楽器と組み合わせて、現代のニュース番組の中で機能する形へ置き直しました。
目指したのは「嫌なこと辛いことがあっても暖かく視聴者を包み込む」思いと「情報番組としての安定感」など。かつ、主張しすぎず、番組全体の空気を支えることを第一にしています。

気象情報の音楽は、栃木の自然をイメージし、シンプルな反復構造をベースにしつつ、演奏上の細かな変化を入れました。
同じ形が続くのに、毎回少しずつ表情が違う。その揺れ幅で、自然が持つ多様なリズムや気配を表現しています。

依頼後に起きた変化

制作側からは、番組の意図——「どんなニュースの日でも、栃木の人たちに前向きに生きてほしい」——が、音として番組を包む形になった、という反応をいただきました。
強いメッセージを押しつけるのではなく、視聴体験の温度を整える役割として受け取られたことが印象的でした。

作曲後は地元の方たちから直接嬉しい言葉を沢山いただくことができました。
ときにはコンビニエンスなどでも声をかけていただいたり。。笑

また、番組としては音楽全般を一つのテーマで統一したことで、全体の印象が引き締まり、場面転換(本編→天気→ジングル)でも空気が途切れにくくなったと感じています。

 

音楽制作について

 

今回の制作では以下のようなことにチャレンジをし、成功したと考えています。

  • 公共性や信頼性が強く求められる場において、
    音楽を「感情を煽るもの」ではなく、番組や作品を支える設計として機能させること。
  • ニュースという冷静さが求められるフォーマットの中で、
    人の気持ちや温度を消してしまうのではなく、
    それらを大切に扱いながら、番組としての役割をきちんと果たすこと。
  • 土地が持つ歴史や文化の文脈を、
    斬新さだけに寄せることなく、現代のフォーマットの中に無理なく接続すること。
  • 単発の楽曲制作ではなく、
    番組全体を一つの思想とコンセプトで貫いた「音の体系」としてまとめること。

 

音楽は、ただそれっぽい物を作れば機能するものではありません。
特にニュース番組のように性格が厳しく問われる場では、
最初の企画やコンセプトの段階で、何を守り、何を活かすのかを丁寧に考えることが重要だと考えています。

もしご相談いただく際は、
方向性が固まりきっていない段階でも問題ありません。
むしろ、その手前から一緒に考えることが、この仕事の本質だと思っています。

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