

2018年5月から11月にかけてイタリア・ヴェネツィアで開催されたヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展(第16回)において、
建築家 伊東豊雄 氏の映像インスタレーション作品「Stream」のための音楽を作曲しました。
本作は、映像を用いながらも、建築の思想や時間の流れそのものを扱う展示でした。
相談時点で共有されていたのは、空間を説明する音楽ではなく、建築の思考と並走する音を置きたいという意図です。
視覚情報を補足するのではなく、空間が持つ密度や速度に、音がどう重なるべきかが問われていました。
そこで、明確なメロディやリズムを前提とせず、音の質感や揺らぎそのものを素材として扱う構成を選びました。
当時は、一般的な基準ピッチ(A=440Hzや442Hz)に限らず、ソルフェジオ周波数を含む、異なるピッチのあり方に強い関心を持っており、
音が「整えられすぎない状態」で空間に存在することを意識しています。
周波数の選択自体を表現として前に出すのではなく、
映像や建築と干渉せず、しかし感覚の奥に残る響きとして機能することを重視しました。
結果として、音楽は展示の前景に立つことなく、
来場者が映像と建築に向き合うための感覚の下地として機能しています。