私たちは6年前、東京の文京区という都会の中心から、那須の森の中へと移住し、環境を一変させました。
この記事では、その移住が私の音楽と心に与えた影響についてお伝えします。
東京に住んでいた頃、躁鬱症を発症しました。かなり酷い状態でした。
後になって原因が明らかになったのですが、都会の騒音がその一因でした。
当時は、都会の機械的な音や人工的な音に囲まれていることに気づいていませんでした。
しかし、那須の森に移住してからは症状が徐々に改善し、約3年でほぼ完治しました。
那須の森が静かで、都会の喧騒から離れたから良くなったわけではないと思ます。
そもそも那須の森は静かではないです。
春は朝から鳥の声が賑やかに鳴り響き、夏はカエルの大合唱、嵐の日には風の音が恐ろしいほどです。
しかし、これらの自然の音は私にとって決して不快ではありませんでした。
つまり、ただ静かであればよかったのではなく、
その「音の質」が問題だったのではないかと考えています。
こういったことは精神科のお医者さんに伝えても聞き入れてもらえない事かもしれませんが、
おそらく事実です。
都会では地面が揺れるほどの工事の低音や、自動車の音、
機械的な持続音、電子的に加工された音楽がスピーカーから鳴っています。
一方、那須の自然音は風が葉を揺らす音や雷の音、生物の求愛の鳴き声など、生命や自然、宇宙に直結する音が多いです。
この音の質の違いが、心地よさや不快感を生む大きな要因だと思うんです。
必然性のある音なのかどうかの違いです。
那須に移住してから、私の聴覚は明らかに変わりました。
それは、音のピッチや音量の変化をより敏感に捉えられるようになった以上に、
音が本物か偽物かを瞬時に判断できるようになったのです。
この感受性の高まりは、音楽制作にも大きな影響を与えています。
(石田多朗)